は、いいとしよう。ところが、そういう運動そのものが、既に次ぎに起り得る戦争の原因を拵えあげているじゃないか、戦争を喰いとめようとする努力そのものが戦争の原因になりつつある。そういう矛盾をお前たちは犯しつつある。もちろん、お前たちの反対の側の自由主義国の連中も、同じ矛盾を犯してるがね。
省三 違いますよ。自由主義諸国には積極的に戦争をしかけなければ自分たちの政治体系を維持して行けない内部的矛盾があるんです。一方の側は、それを受けて、つまり、やむを得ない防衛として戦争を考えているだけだ。
舟木 いや、仮りにそうだとしてもよろしい。そうだとしても、そう言う考えをも含めて、それがもう既に、そのもう一方の側の戦力の一部分に組み込まれている。それを俺は言っているんだ。
省三 じゃ僕らはどうすればいいんです?
舟木 ジッとしているんだね。
省三 ふ、なにもしないんですか?
舟木 僕は医者だ。或る種の病人には絶対安静を命ずる。
省三 すると僕は病人ですか?
舟木 奔馬性結核と言うのがある。初感染の患者に多いよ。お前は精神的にそれだ。出征するまで、まるでそう言う事は考えないで、戦争して、帰って来るや、い
前へ 次へ
全164ページ中45ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング