り反動的な、科学と言うものを、ただ試験管の中でバクテリヤを培養することだと、それだけが科学だと思っているものの固定観念ですよ。主体は動き得るんですよ。生きてるんですよ。
舟木 試験管の中のバクテリヤも動くし、生きているよ。
省三 よした、もう! 兄さんと、いくら議論しても同じ事だ。ただねえ、なるほどバクテリヤと同じかも知れんけど、このバクテリヤはジッとして居られないんだ。そうじゃないですか、又戦争が起きるかも知れないんですよ。このままで進めば。すると又、バタバタ虐殺が始まる。真先に引っぱり出されるのは僕らだ。ジッとしてはおれない。なんとか、これを喰いとめるために、なんとかしないじゃ――
織子 それは、わかるわ私にも。
省三 それをしているまでもないんですよ。主義がどうの政治がどうのと、いや、それもありますけどね。結局は、根本的には今言った気持のために、動かざるを得ないんですよ。そして動くとなると、今の世の中を見わたして足がかりになる思想は、これしか無いんです。そうなんですよ!
舟木 フ! そうなんだよ。又戦争が起りそうだから、それを喰いとめなきゃならんと思って、お前たちが運動しているの
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