が場立ちに出かける時あ、かかさず、うしろから切り火を打ってくれると言った女だ。自分の生んだ娘が、そう言った、ナイロンの脚を投げ出して、爪を真紅に染めながら、親父に向って、ドルと恋愛なんて言ってるのを見れば、こりゃ、気絶するね。
房代 ふん。……(向うのジャズソングを低く鼻歌で)
若宮 ハハハ、わしは違う。わしは、これも良いと思ってる。ここんとこ、十年二十年、日本はまあ、何とか国日本県と言うとこで、先ず殖民地となった。わしはそう見る。今さら泣いても笑っても、できた事で致し方なしだ。して見れば、若い娘が、これまた、そんな風になるのも、これ、あたりまえ。とにかく、生きては行かなきゃならんからな。
房代 もういいかげんにウィスキイ、よしたらどう? 今に腎臓が破裂するわよ。そうよ、生きてだきゃ行かな[#「生きてだきゃ行かな」はママ]、ならんだわ。お父さんの腎臓はお父さんが思っているより悪くなっているのよ。舟木さんが言ってたわ。
若宮 ふふ。……しかしなあ房代。恋愛は自由だがね、この、なんだよ、眼色や毛色の変った子を生むのだけは、まあ、よしにしといた方がよかろうぜ。そういう、わしから言えば孫だな、
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