るようなもんじゃなくなる。喧嘩は両方でしたんじゃないか。誰か烏の雌雄を知らんやと言ってな。片っ方が、その、百パーセント正しくって片っ方が百パーセントまちがっていたなんて喧嘩があるかね? 歴史の審判は公平ですよ。東京裁判はまちがう事あ有ったとしても神の審判はまちがいません。
房代 ほら、よっぱらっちゃった。
若宮 酔やあしない、たかがこれっぱっちの酒でお前。だから、どうだ、投資しないか?
房代 おことわり。
若宮 もうけさせてやるんだよ?
房代 信用しないの。いえ、お父さんだけでない、もう世の中の誰も信用しないの。
若宮 すると、何をお前は信用する?
房代 そうね、ドルは信用する。
若宮 え、ドル?
房代 ドル。
若宮 ああドルか。……どうりで、ドルを持った恋人を次ぎ次ぎとこさえるんだね?
房代 悪いの?
若宮 悪いとは言わない。いっそ、お前のやり方もハッキリして良いと思ってる。ただねえ、こんな風になったお前を、お豊が生きていて見たら、ぶったまげるだろうと思ってな。
房代 お母さんの事は言わないでよ。
若宮 なんしろお前、毎朝房ようじに塩を附けて歯あ磨かないでは磨いたような気がしない、俺
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