スキイのコップ片手に、幾種類もの夕刊に目をさらしながら) ハッハ、いやならいやで、それでいいんだ。腐っても、こいで若宮猛だよ。けちっくせえ、娘に金策を頼んだりはしたくねえ。だから貸してくれと言ってんじゃないんだ。見かけた山があるから、それに投資しないかと言ってる。この際三万ばかり投資してくれれば、三月すれば十万にして返そうじゃないか。
房代 そんなうまい話なら柳子さんにしたらどう? 良いカモがつかまらなくなったもんだから、自分の娘までくわえこもうと言うの?
若宮 ちがうよ! この話は株の方の話じゃないんだ。後藤先生の方の手で、川崎の方の小さい工場で、爆弾くらってぶっこわれたままで手を附けずにあった鉄工所だよ、そいつをタダみたいに安い値段でソックリ買い取ってな、いや私も調査に行って来たが、ぶっこわれているようでも此の際三十万ばかりかけて手を入れれば、チャンと使えるんだ。朝鮮があの有様だからね、仕事はじめさえすれば、註文はいくらでも有る。連盟の連中で以前そう言った仕事には年季を入れた者が二三人、いっしょにやろうと言ってくれている。
房代 あぶないもんだわ。お父さんなぞ、やっぱりカキガラ町へ
前へ
次へ
全164ページ中37ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング