でさえ、そう思うんだもの。柳子さんにして見れば、何のつながりは無し、おっ母さんが生きていた頃は、あの伯母さんからイジメられこそすれ、良くしてもらった事など、こっから先きも無いんだから、ああしてまるで死ぬのを忘れてしまったようにネバられてると、さぞ憎いだろう?
柳子 とんでもない! そんな事ありません。あたしは、どうせメカケの子で、はじめっから馴れてるし、いっそあなた、格式だあ教育だあで、縛られないで、こうして自由気ままに過して来られたのも、そのおかげなんだから、うらんでなんか、微塵もいないよ。ホント! たださ、ここの家屋敷のこと、おばさんがそんな風だと、いつになったらカタが附くんだろうと思ってさ。
浮山 それさ。うっかりすると、その二番の方の債権――銀行の方はツブれているから、どうと言う事は無いかもしれんが、しかし銀行の方のも最近、整理委員が動きだして、権利を松山組に譲ったとか売るとか言う噂もあるしね。
柳子 そりゃ、しかしデマだわよ。あたしがチャント若宮の手で調べてあるの。いよいよとなって、債権をひとまとめにして、こっちを安く買いはたこうと言うコンタンらしいの。それよりも舟木さんの方
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