ために掘った横穴だとか、そうだ、此処も戦争時分は防空室に使っていたっけ、そういう所で人工キノコを作っている。考えて見ると皮肉なものだ。
柳子 そう言えば、原子爆弾が爆発した時は、キノコそっくり。先日ニュース映画で見たわ。
浮山 こんなものは、暗いジメジメした所でなきゃ育たないんだな。それに、ちょうど酒を醸造する室の中に独特のバクテリヤが居て、そのために一定の味を持った良い酒が出来ると言ったね。
柳子 すると此処にもバクテリヤが、およおよ居ると言うわけ? (暗い周囲を見まわす)なんだか気味が悪いわねえ。
浮山 フフ、なあに、そんな、そういうタチのもんじゃ無いんだ、バクテリヤなんて。お柳さんみたいな度胸の良い人が、変なことで気が小さい。
柳子 あら、光っている。ごらんなさい、よく見ると薄白くポーと光ってるんじゃない? ほら、ここんとこ。(箱の中に手を入れる)
浮山 そこらが一番うまく行ってるとこらしいんだ。
柳子 ひっ! (不意に叫んで、四五歩飛びさがって、一度ころびそうになりながら、地下室への階段を三四段かけあがる)
浮山 (こちらもびっくりして)ど、どうしたの? (懐中電燈を取ってそっ
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