た、そう、ダイスか。あの方じゃなかったのか?
房代 なあによ、そんな――?
若宮 ハハ、いやなに、ハハ――(笑いながら去る)
省三 (それまで黙々として飯をかき込んでいたのが、ジロリと房代を見て)ヘッヘ、ヘ!
房代 なんですの?
省三 ふっ! (モグモグと食っている。それを睨んでいる房代)
舟木 (立って出て行きかけながら)省三、あとでちょっと話したい事がある。(出て行く)
省三 うん。
3 私の室
私 ……(暗い廊下を、須永を従えてユックリと歩き、それから三階への階段を休み休み昇って行きながら)なんの変ったことも無い、昨日も一昨日も一カ月前も同じ平凡な夕食の風景だ。この須永のような青年が訪ねて来るのも、ほとんど毎日のことで、若い人たちは好きな事をしゃべり、好きな事をして帰って行くので、私は相手になったりならなかったり、眠くなると捨てて置いて自分だけ眠ってしまう事もある。私はもう人を愛さない。憎まないと同じように愛さない。人は勝手に私の所に来るがよいし、又勝手に私から去って行くがよい。私はただおだやかな眼で、それを見送るだけだ。既に私は生から何も期待しない。以前はこうでは
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