僕あ――だけど、死ぬのは、そんなに怖くないですよ。あの、なんでもないんですよ。夢みたいに、あの、夢がヒョッとさめる時みたいです。……大して、苦しくもないですよ。あい子のお父さんだって直ぐ、なんでもなくスット死んで――僕がこんなふうにして、バンドを廻してですね。(言いながら、バンドでではなく、腕で若宮の襟の奥を掴む)こうして、チョットあの――(腕に力を入れかける)
私 ……(寄って行き、その腕を離させる)須永!
若宮 (叫ぶ)しめてくれ! 頼むから、ひと思いに、しめてくれっ! 助けてくれ! 殺してくれ! たまらない! たたた、たまらないっ! わーっ! ヒーッ!(ノドも叫けんばかりに絶叫して、房代の肩の上にくずれ落ちて、倒れる)
房代 お父さんっ!
舟木 そっとして置くんだ。鎮まれば、いい。
織子 あなたが、こんなふうになすったんだわ!
舟木 まだ言うかね? 仮りに、そうだとしても、それが何だ? こんなふうに人間は出来ているんだ。お前の神さまは人間をこんなふうに作ってしまったんだよ!
私 もう、よい! よしたまい! (はじめて叫ぶ。しかし昂奮したためと言うよりも頭がハッキリしたためである。
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