膝を抱きしめている柳子の腕をこじ開けるようにしてはずして、グタッと前のめりに伏してしまいそうになる柳子の身体を、肩をつかんであおのけにする。気を失った柳子の青白い顔、口のはたに白いアワを附けている)
織子 (寄って行き)柳子さん! 柳子さん!
浮山 どこだ? どこを――(と、胸と腹に弾きずを捜す。無い)
舟木 ……(無言で寄って行き、これも胸や横腹に手をかける)
浮山 よせっ! (いきなり歯をむいて、舟木の手を払いのける)手をふれるな! こいつは、俺の女房だ! さわるのは、よせっ!
舟木 う? (失神した柳子の、はだけた胸の上で、二人の男の、全く動物的な眼が切りむすぶ。……舟木の顔に残忍な冷笑が浮んで)俺は医者だよ。
浮山 ち!
私 (その舟木につかみかかりそうな浮山の肩を掴んでとめる)浮山君、よしたまい!
舟木 ……(ジロリと浮山を見て、かかって来ない事を見て取って、眼を柳子に移し、膝を突き、手の脈を取り、右手で柳子のつぶった眼ぶたを開いて、覗きこみ、それから、腕の関節を垂直に立てて置いてから、手を離して、腕がストンと床に倒れるのを見て)……ピストルではない。エピレプシイ型の発作だ。
前へ 次へ
全164ページ中141ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング