(それに向って)こっちへ来ませんか。どうです工合は?
私 ありがとう。ええ、まあ。……(微笑しながら、舟木のそばに掛ける)モモちゃん、今晩は。
モモ ああ先生、今晩は。
舟木 (浮山のまわした夕刊を開きながら)織子、省三はまだ帰らないのかね?
織子 ええ、今日はアルバイトの日だから。でも、もう間も無く帰って来るんでしょ。
舟木 アルバイトならいいがねえ。こんなふうな事に又参加してるんじゃないか?
織子 なんですの?
舟木 大学生と警官の衝突さ。
織子 (夕刊をのぞき込みながら)でも近頃ではオマワリの方でも随分横暴なことをするようよ。
房代 近頃じゃ共産党の乱暴と人殺しの記事ばかりじゃないの。そら、ここにも、弟殺し、そいからここにも、三人殺し。イヤだ! どういうんでしょ?
浮山 そういう時代なんだな。
私 モモちゃん、フルートは上手になったの?
モモ ちっとも。息が私、つづかないから。
私 でも、ホントに好きなんだね。いっときも離さない。
柳子 そうなんですよ。だからこれでいいんですよ。芸ごとと言うのは、そのお道具を自分の身体に年中ひきつけていて離さないようにしてりゃ、いいの。あたしが
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