ちゃん、こっち。(桃子の背を抱き、椅子を引いてやってかけさせ、自分もその隣りの席につく)
浮山 モモコ、また柳子小母さんとこにおじゃましてたのか?
モモ ううん、小母さん迎えに来て下さったの。
浮山 なんだ、すると又塔に登っていたのかい? いかんなあ、こんなに言っているのに。
柳子 でもね、モモちゃんは平気よ。危いのは私たちの方ね。なまじ眼が見えるもんだから、足がブルブルしたり。
浮山 ですから、ですよ。人さまに、この――
柳子 それよ、あすこに登ると良い景色。遠くの空の色が、今時分になると、あれは何と言えばいいのかしら、広重のなんとか――あら、ごめんなさい、モモちゃんには見えないわね。
モモ ううん、見えるよ。
房代 あら、じゃ、だんだん見えるようになって来たの?
モモ ううん、そうじゃない。けど見える。
浮山 とにかく、黙って登るんだけはもうよしてくれないと。
舟木 皆さん、今晩は。(言いながら別の出入口から入って来る。キチンと背広を着て、医者と言うよりも学究と言った人柄)
織子 あなた、ここへ。
舟木 うん。やあ、御馳走だな。
私 ……(ドア口から入って来て一同にえしゃく)
舟木
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