な。
房代 揚げてあると、なんでもフライだって言うの。織子さんのフランス料理の腕が泣いてよ。
若宮 でもフライなんだろ。ハハ! (セトモノのカケラを打ち合せるような、短い断ち切るように笑う癖。織子に)フランス語では、じゃフライは何と言うんですかね?
織子 ホホ、ようござんすよ、フランス料理ってほどのものではございません。
若宮 ございませんか。(と既に上の空で相手の言葉は聞かないで、皿のわきに開いて置いた手帳に向ってソロバンをパチパチはじいている)ううむ、と……。
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(その様子を房代は舌打ちするような軽蔑の顔で見るが、織子も浮山も馴れているため、格別の反応は示さぬ。……柳子と桃子が同じドアから入って来る。柳子はわざと黒っぽい絹の和服にくし巻の髪。ひどく若く三十三が二十五六にしか見えない。桃子は黒のスェータアにネーヴィ・ブルーのダブダブのズボンで、ポカンと開いたままで見えない両眼だが、盲人らしいオドオドした所は無い。ピンとした身体つきが少年のようだ。片手に銀の笛)
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織子 どうぞこちらへ柳子さん。
柳子 はばかりさま、すみませんわね。そらモモ
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