―(と注射器を示す。その銀色のケースが、何かの凶器のように光る)
織子 あなた! でも、あの、あなたも、もっと落着いてから、あの――
舟木 私は落着いているよ。
織子 でも、あの柳子さんの事は――いえ、もうあの、もう、あなた、お願いですから、およしになって下さい! 私たち今夜にでも此処から出て行きましょう!
舟木 なんだ? 何を言っているんだ? ハハ、お前こそ落着きなさい。真青な顔をして眼が充血している。(寄って行き、手のひらを妻の額に当てる。当てられて、織子、ふるえあがる)……熱も少しある。どうした、寒気がするのか? ……昂奮しすぎる。お前にも一本さしてあげようか?
織子 い、いいんですの、いいんです! お願いですから、あなた、もうサナトリアムなど、私たち、どうでもいいじゃありませんの? 私たちはこのままで、今のままで幸福なんですから、あの、そんな事はお考えにならないで此の家を出て、あの――
舟木 サナトリアムがどうしたんだよ?
私 舟木さん、あんたサナトリアムを立てるというのは、本当ですか?
舟木 う? そう、事情が許すようになれば是非やって見たいと思っていますよ。まあ、それだけの
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