せん。
織子 逆です、それは。あなたが、お礼も出せないほど貧乏だったから、舟木は奥さんの手当てに夢中になったんです。小さい時分から青年時代へかけて非常に貧乏な家に育ったために、貧乏な人には病的な位に同情するんです。サナトリアムのこともそこから来ていますし、或る意味で省三さんより激しい貧乏人の味方かもしれません。現われ方がちがうだけです。そういう人なんです。もちろん、あなたや亡くなった奥さんが好きで、好意持っていたからではあるんですけど、もしお宅がお金持だったら舟木はあれほど熱心にはならなかったでしょう。そう言う人間です。私は十年近く舟木に連れ添っています。腹の底から舟木を知っています。
私 …………しかし――(次第に恐怖が全身を占めて来て、手に持ったシガレットを吸うのを忘れて、遠くの闇を見つめている額に冷たい汗がにじみ出て来ている)
織子 どうにかして下さい! 舟木にあなたから、そうおっしゃって、此処から、どこかへ――今夜にでも、舟木を御一緒にどこかへ連れ出しでもして下さるか――私、ズーッと自分の部屋で今まで祈っていましたけれど、今夜は、どうしても私、神さまが見えて来ないのです。見失っ
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