を見ていましたら。いえ、須永さんを見ていたら、と言った方がいいかしら。とにかく、そんな気が私、したんです。
私 誰をです? 誰を殺す――?
織子 誰かわかりません。今夜の舟木の眼を見て下さい。須永さんは、やさしい眼をなすっていますのに、舟木は恐ろしい眼をしています。
私 ……それは、しかし、あなたの敏感な、クリスチャンらしい一種の――幻想というか、いや、今夜のここの空気がいけない。須永が、来たのが、いけない。なんとかしますよ直ぐ。――とにかく、そんな事におびやかされたあなたの神経、つまり一時的なヒステリイが描き出した幻想ですよ。舟木君のような冷静な科学者が、そんな――
織子 いえ、まるで冷静に落ちついて、どんな事でも出来る人なんですの、舟木は。しなければならないとなったら、落ちつきはらって、私たち全部でも、夕飯の中にストリキニーネを入れて毒殺してしまえる人です。
私 僕は人格的に言っても舟木君がそんな人だとは信じられません。仮りにもそんな人が、ロクにお礼もあげない、あげられない事のわかっている僕んとこの、死んだ家内の治療に、あんなにけんしん的に、あんな遠い所へ通って来てくれる筈がありま
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