のです。舟木はそして恐ろしい程意志の強い人間です。自分の夢、自分の理想を実現するためには、どんな事でもやりかねないのです。しかも自分のやろうとする事は、社会的に絶対に正しいと思いこんでいます。その正しい事を妨げる者は、みんな悪い。そうでなくても、広島で寝ている伯母さんや、柳子さんや若宮さんや浮山さんなど、世の中にとって、まるで有害無益の人たちだと言うのです。虫けら同然だと言うのです。犯罪にさえならなければ、みんな殺してしまっても差しつかえないんだと言ってた事があります。……自分の夢を実現するためには、そこまで思いこんでしまう人です。そういう点、ああして弟の省三さんとは始終議論して真反対のようですけど、それは現われ方が違うだけで、省三さんはああして政治的なことで、まるで気ちがいのように夢中になっている、舟木はそのサナトリアムの夢にとりつかれている――やっぱり兄弟なんです。
私 それは、しかし――夢は誰にも有ることで、そのために人を殺しでもしたいと思うことは有っても、実際に於て殺しはしないのですから――
織子 それがホントに殺すんじゃないかしらんと、今夜チラッと、そんな気がしたんです、舟木
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