ら、浮山がヌッと入って来る。これまでの淡々として枯れ切ったような人柄が一変していて、ほとんど面変りしたように眼がギラギラと殺気立っている。入って来るなり、その辺の様子をチラチラッと目に入れ、四角にスッと坐る)
[#ここで字下げ終わり]
若宮 あ、浮山君。
浮山 若宮さん、あんた、直ぐに――今夜にでも、此の家から出て行ってくれ。
若宮 出て? ……だしぬけに、君、何を言うんだ? どう言うそれは?
浮山 どう言うもヘチマも無い。速刻出て行ってほしい。私は此の家屋敷一切の管理を所有者から委任されている人間だ。それがあんたに命令する。
若宮 へえ、命令するかね? 命令は結構だが、理由は何だね? どう言うわけで私がここを立ち退かなきゃならんのかね?
浮山 あんた自身、胸に手を当てて考えて見りゃ、わかる筈だ!
若宮 さあて、わからんなあ。ここの家の相続権の事かね? ヘ、そんならチャンと婆ちゃんが死ねば柳子さんに来る事になっているし、一部分が舟木さんの権利になることもハッキリしている。そうさ、その柳子さんの法定後見人はわしだ。しかしそいつは前から決っていた事だ。今夜急にどうこうと言う事じゃない。どう
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