宮 ここの先代にゃ正妻に子が無いからね、今広島で死にかけてる大奥様の遠縁の浮山君と、大旦那の妾の子の柳子さんをめあわして、後をつがせる話になっていましたさ。途中、嫌って逃げたのは柳子さんでね、浮山はさんざんジレて、ジタバタして、あげくが自棄になって遊び出した。絵かきの仕事も放り出してね。さんざん女狂いをして、そこで立派な一かどの道楽もんが出来あがったと思った時には、まるであんた、当人腑抜けになっちゃってた。ヘヘ、相手が不感症で、片やが腑抜けだもの、商談なり申さず。
私 舟木さんは、すると、この家とどんな関係になっているの? たしか、元の此処の主人側のつながりが有ったし――?
若宮 またいとこか何かの子供ですよ。あれでやっぱり柳子さんにゃ気があるんだ。もっとも、柳子さんにゃ、広島の婆さんが死ぬと、此処の家の相続権が舞いこむからね、この家と柳子と、ソックリまるごと取り込みたいか。
私 まさか、君、そんな――
若宮 ヘヘヘ、此の家なんぞ、ただ見れば唯の家だが、こいでお化け屋敷ですよ。みんなお化けだ。あなたなんぞも、お化けの一人じゃありませんかね? どうです、あなたも、柳子と言う女に野心がある
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