きのテーブルの上に置き、片脚を先きにソロソロとじゅうたんの上に降り立つ。それが、エモノを見附けたヒョウが、エモノへ向って音を立てないでしのび寄るようだ。困ってモジモジしはじめる須永)
若宮 (その間もつづけて)女たちはみんなおびえてしまった、ひとかたまりになってちぢみあがっていたが、その中で海千山千の、枕だこの出来たシタタカ者が二人ばかり、どういうわけか、眼の色を変えて、人殺しを追いかけまわしはじめた。(柳子の室では、須永に飛びかかりそうにしていた柳子が、その時、飛びかかるのとは反対に不意にグナリとなったかと思うと、ひっかけ結びにしていた博多の中はばの帯に指をかけて、キュウと音をさせて、バラリとほどく。次ぎに腰紐を。眼はまたたきもせず須永から離さない)血の匂いが良いのかねえ? 商売女の中にゃ、ほかの事じゃツンともカンとも感じねえ奴が、ロウソクのロウの焼ける匂いをかぐとトタンに、うわずっちまうのが居たりするからね。ヘヘ。しまいに両方から引っぱりっこで、兇状持ちも、めんくらったろうて。自分々々の部屋につれ込んで、酒を飲ましたり、かじり附いたり。一方が、一緒に心中してくれとくどくかと思うと、
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