そいで、外へ出ようとした所へ来合わせた米屋の配達人を射殺して逃走し、目下捜査中とある。調べによると、死んだ娘の恋人だった須永孝が犯人に十が十、まちがいないと、チャンと書いてある。どうも――。
舟木 ふむ。……(私に)ほんとですかねえ?
私 多分、どうも……。
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(一同シーンとなってしまい、顔見合せている。……間)
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柳子 ……(フッと夢からさめた様になって)え? なんですって? (立ちあがる)
房代 あたし、怖い!
浮山 すると、ピストルを持っている。
若宮 持っているわけだ。
柳子 (フラフラ歩いて来て)あの、その、須永さん、人を殺した――?
若宮 そうらしい。
柳子 あの、すると、ここに居た須永さん? ……(舟木や私の顔を見まわしているうちに、眼つきが妙になり、歯を喰いしばってシュウと言うような声を出し、それがヒイと聞こえるようになって身体をあお向けにそらしてストンと倒れる)
織子 どうなすって? 柳子さん! 柳子さん!
房代 柳子さん! しっかりなすって!
浮山 いけない! あんまり昂奮するもんだから。
舟木 (これは医者で、落ちついて、そばに寄って行き)織子、洗面器に水を。(片膝を突いて、手首を握る。織子小走りに階下へ去る)……
若宮 テンカンでしょう?
浮山 注射かなんか、あの――?
舟木 ……(柳子の目ぶたを開いて覗いていたが)いや、それには及ばんでしょう。テンカンと言うより、あんまり昂奮しすぎてる所へ、今の事で――(浮山に)それに、コカイン相当にやってるんでしょう?
浮山 ええまあ。近頃では、その上に、睡眠剤をのんだり、いろいろで――
舟木 いかんなあ。……そこのソファの上に寝せとくか。(言われて房代、省三、浮山の三人が柳子を抱えあげて、ソファに寝せる……)こういうタチの人は、下手をすると、おかしくなる。
若宮 気が狂うんですか?
舟木 いや、そういうわけでもありませんがね。
若宮 そう言えば、此処の亡くなった大旦那も、ひと頃、少し変だったとかってね。あの高い塔をおっ立てたりしたのなんかも、まあ、普通じゃない。
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(そこへ織子が急いで水の入った洗面器をかかえて入って来る。それをソファの下に置き、浮かしたタオルをしぼって、柳子の額にソッとのせる。……柳子、意識を失ったまま身体をビクッとさせるが、直ぐに静まる)
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舟木 ……(それをジッと見おろしていたが)いいだろう、大した事はないようだ。……(私に)どうします?
私 ええ。……
舟木 見たところ、そんな兇暴な所など、まるで無いけどねえ?
私 うん。……極くおとなしい――私にも腑に落ちない。あの男がそんな――
若宮 でも、あの人に相違は無いんでしょう?
房代 あたしは、なんだか違うような気がする。同名異人の――。だって、あんな、まるで女のような人が、そんな。
織子 (柳子の額の手ぬぐいを取りかえながら)私もそんな気がするわ。とてもやさしい、あんな――
私 だったら、ありがたいんですがね。……でも、須永は最近恋人を亡くしています。
若宮 すると、やっぱりそうなんだ。……どうすればいいんですかね? 警察に電話かけますか?
浮山 いや、そりゃ、もう少し待った方がいい。まだハッキリそうと決ったわけじゃないんだから。
若宮 だって、浮山さん、そうだとすれば、何をしでかすかわかりませんよ。ピストル持っているし、あぶない。
舟木 だから尚のこと――いや、仮りにそうだとしてもだな。
省三 でも、なんでしょう、仮りにそうだとすれば、先生、あなたの所に須永君がチョイチョイ来ていたと言う事は、須永君のうちでも知っているんでしょう? それなら直ぐ調べが附いて、もう今ごろは此処へ警察から人が来ている筈だ。
私 ……だが、須永は自分の家じゃなく、たしか下宿しているから、そう早くは調べが附かんかも知れない。もっとも下宿にしたって、もしそうなら、調べれば私の出したハガキなども有る筈だから、それに依って問い合せぐらいは、もう来てるとも言える。
省三 やっぱり、じゃ、ちがいますよ。あんなおとなしい須永君が、そんな筈はない!
舟木 しかし、それはわからない。そういう事は、言って見れば突発的なアクシデントとして起る場合もあるから、その当人の性質如何には、割にかかわらない。
私 ……どうすればいいだろう?
若宮 一刻も早く此のうちを出て行ってもらうとか、なんとか――
房代 ホントにそうだかどうだか、わからないままで? それは、ひどいわ!
若宮 すると、当人に、あんたがそうなんですかと言って聞くのか?
私 待って下さい。私にも、なんか、責任みたいなものが有るから、いっとき私にまかしてほしいんだ。私が逢って見る。すべて、そ
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