(他の三四人も笑う。一同食事をしながらの会話である)
浮山 すると若宮さんは、その後もズッと再生連盟の方へ行っているんですかね?
若宮 やあ、いや私は再生連盟よりも後藤先生が追放解除になって、この、又会議所の元の連中と動き出そうと言うんで、そういう引っかかりで、いろいろと頼まれる事が多くて、そいでまあ連盟の方へも行ってます。ハハ、だんだん面白くなって来ていてね。
浮山 だが、どういうもんだろうなあ、そういう連中が又々頭をもたげて来て、あれこれと引っかき廻すようになるのが、どういうもんかなあ、ねえ? (私に)
私 そう。……ありがたくはありませんね。大体まあ現在の四十代五十代以上の人たちは、ホントは何をする資格も無いわけだし、事実、もう駄目でしょう。だけど戦争後に頭をもたげて来た連中は、みんないずれも粒が小さいのだから、やっぱり元の連中が又押し出して来るのも、或る程度まで、やむを得んかも知れんなあ。
若宮 それでさ! 粒が小さいだけなら、まだ良いんだ。たいこもちみたいなグナグナな、あんた、バックボンとか言ったな、あちらさんの前でもこちらさんの前でも、ただもうペコペコこいてるだけで、へえ、ひっこしのねえ段ではないんだから。ちいっとシャンとした奴あ、シャクにさわるが、みんな赤です。こいつが又、ほかの事ではシャンとしているが、こんだ向う側一辺倒と言う奴で、そっちい向いたとなるとペコペコもグナグナも無い、ナメクジが塩うかぶったと同じだからねえ。やっぱし結局はドシンとした元の人たちが出て来てくれないじゃ、政治にしたって経済にしたって立ち直りゃしないと私は見るね。
柳子 そんな事言うけど、株屋が政党などにおちょっかいを出しはじめたら、もうおしまいじゃないかしらね、あんたの前だけど。
若宮 と、とんでも無い! 政党におちょっかいを出すなんと、そんな柳子さん、若宮猛なんて株屋、株屋と言ったって、あんた、買うたか買わんかの、ノミ屋に毛の生えたような小者だのに、政党に手を出すなんて、あんた、先さまが笑わあ。ただ私あ、会長の後藤先生とは旧い縁で、だから、あちこち使い走りをしているまでで――
柳子 そんな事より先日お願いした炭坑株の山左の方への保証金、ちゃんとナニして下すっといた?
若宮 あ、ありゃ、ちゃんとしときました。まだ報告しなかったかいな? 鉄の方の、そら、保証金で山左にあずけといた
前へ 次へ
全82ページ中10ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング