いてつてやるか。(ミルが持つて来たブランデイのビンを見て)どうだい、一杯行こう。(コツプを取る)
彦一 よからう。まあお父つあん。(注ぐ)
彦六 (グツと一口に飲んで眼の前を睨んでゐたが突然と大声で詩吟を発する)さ、飲め!(彦一にコツプを渡して注ぎ大笑)アハハハ。アハハハ……。
ミル ブラボーツ!
彦一 (これも一気に飲んで)ハハハ。……乾杯もすんだ。さあ、行かう!
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そこへ、髪をくづしたお辻がのぼせ上つた顔で乱入して来る。
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お辻 ……畜生、殺してやる。群馬県あたりからつん昇つて来たベエベエあまのくせにしやあがつて……(三人の姿は眼にも入らない。畳敷に駈け上つて、道中差しを拾ひ上げると)ひとの男を寝取つたとは、ふざけやがつて!
彦六 ……どうしたんだ、お辻?
お辻 あゝ……(ポカンと見てゐる間にギヨツとする)な、なんですか? どう……?
彦六 いい加減にしろよ。
彦一 さあ、父つあん、夜が明けちやつたぜ。
ミル (兄のポケツトから花束を取る)どうしたの、これ?
彦一 さつき、階下で売り付けられたんだ。お前にやるよ。
ミル さう。あゝ綺麗だ
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