あん?
彦六 こいつめ!
ミル (逃げる)いらんのか? ウワーイ!
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親子三人顔を見合つて笑ひ出す。
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彦一 ……だが、先方から取ると言つた五千円とかは?
彦六 かうなれば、もういいんだ。
彦一 だつて、そりや……
彦六 なあに、二千五百円だけは、かうしてトウの昔に受取つてある。
彦一 なあんだ、さうか。
彦六 それ位取つてあるさ、この私を見損ふなよ、アハハハ。この中から立退いた連中に送つて分けてやらう。一軒当り百円として十一軒で千百円。これでもみんないくらか助かるだらう。実は、もうあと百円づつも取つてやらうと思つてゐたが、どうやら潮時らしいな。……だが俺は白木なんぞに負けたんぢや無いぞ。あんな小僧に負けてたまるかい! まあ強いて負けたと言へば、彦一、お前に俺は負けたんかな。
彦一 アハハ。そいで仕度は?
彦六 仕度もヘチマもありはしないよ。チヤンと大事な物だけ肌身につけてある。
彦一 この球台や道具類は?
彦六 放つとけ。どうせ家賃のカタに押へられてゐた物ばかりだ。
彦一 歩けるかい、父つあん?
彦六 なあに……さうだな、お辻に金を少し置
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