……父つあんの気持が、俺にも解る様な気がする。
ミル ぢやこれで私も立派な叔母さんになつたわけね。どうだい!
彦六 で、相手の女はどこのもんだ?
彦一 うん、仲間の妹でな、少しぼんやりしてるけど、気性はいい女だぜ。今メリヤス工場に通つて働いてゐる。
彦六 なぜその赤ん坊をつれて来て見せねえんだ。
彦一 駄目だよ、まだフニヤ/\して手に負えねえ。
彦六 ふーむ、孫か……笑わせやがる。馬鹿野郎。(流れ出して来る涙を横なぐりに拭く)
彦一 なあ、父つあん、思ひきつて、一家ひき移らうぢやないか。家もあるし、気の合つた仲間もゐらあ。
彦六 (考へ込み乍ら)だが、私が行つて、ボンヤリふところ手で毎日遊んでゐるのもな、今更。
彦一 だつて、父つあん、病気だらう?
彦六 病気で寝てるんぢや無い! 寝てゐたから病気みたいになつてしまつたんだ。
ミル あれあれ! あんな事言つてゐる。
彦一 アハハハ。ぢや問題無いよ。捜しや帳付けでもなんでも、仕事はあるさ。……ぢやいいね?
彦六 うん。
彦一 ……ぢや、お千代、話を付けるから、先刻の連中を呼んで来い。
ミル うん。(走り出して行く)
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