強して、今に日本一の女優さんになるつもりなんだから絶対に劇場はよさないわよ。
彦一 電車で通へばいいよ。日本一にでも世界一にでもなるさ。だが、千代も大きくなつたもんだな、もう立派なモダンガールぢやないか。
彦六 さうさ、もうチヤンとお婿さんの見当まで付いてゐるよ、なあ、お千代?
ミル うゝん、いやツ! いーだ。
彦一 さうか、そいつはいい。
彦六 ときに、お前まだ一人か?
彦一 五日前に赤んぼが生れちまつた。
彦六 赤んぼ? 誰の赤んぼだ?
彦一 俺んだよ。
ミル へーん、ぢや、おかみさん貰つたの、兄さん?
彦一 一年前から世帯を持つてゐるんだよ、男の子だ。
彦六 へえ、私に孫が出来たわけか、こいつは笑はせる。なんて名前だ。
彦一 名前はまだ無えんだよ。なんだか変てこで仕様が無いんだ。
ミル そんなの無いわよ、あたりまへぢやないの、馬鹿ね。
彦一 それが変てこなんだから、仕方がないよ。
ミル ぢや、兄さんの子ぢやないの?
彦一 たしかに俺の子だけど、変てこなんだ。そいで、父つあんの顔を見たら、納りが付きさうな気がしたんで、実は帰つて来たんだがね……
彦六 で、どうだい? フフ。
彦一 
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