てゐたところで斬り死にするようなもんだ。
彦六 お前なにか、私に説教する気か?
彦一 おれ達の仲間なら、一人をうつちやつといて逃げ出したりはしないと言つてる迄だよ。第一働いて暮すにしたつて、同じやうに働く人間の仲間で暮すんでなきあ、泣くも笑ふも面白い事があるもんか。父つあんの自由党だつてその辺は同じ事だつたらうぢやないか。
彦六 なにをいやがる。
彦一 さうぢやないか。父つあんが、つむじ曲りになつたのも自由党以来の父つあんの了見を誰も解つてやらうとしなかつたからだ。俺が昔ゴロになつちまつたのも、俺の心持を知つてくれるのがわきにゐなかつたからだ。一人ぼつちになりや、人間曲るより他に法はねえよ、俺だつて父つあんの子だい。……そりや俺達あいつも不自由だらけだがこんなところで、ろくでもねえ連中を相手にしてゐるよりや、まだいくらかましだ。楽ぢやねえか、ホントの暮しがあるよ。生きるも死ぬのも一緒だ。仲間の骨は仲間が拾うんだぜ。
彦六 仲間の骨は仲間が拾ふか、……フン、そいで此の家はどうするんだ?
彦一 うつちやつとけばいいよ。
ミル へーん、私はどうすんの? 私、劇場のダンサーしてんのよ。ウンと勉
前へ 次へ
全64ページ中57ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング