元が自由党で主義のために荒つぽいこともしたり、他人の罪までかぶつて暗いところに行つたほどの人ならこの位の理窟は解つてくれてもよかりさうなもんだ。こつちも金づくでやつてゐるんでもあるまいし。
彦六 ぢやあんたは、唯でこんな事を引うけてゐなさるのかね? それに今迄追立てられた十軒余りの店の、血の出るような立退料から、三割四割とピンをはねたのは、どこのどなたでした? ハハハ、ともかく、もう一度ツラでも洗つて出直して来たらどうだい?
白木 なんだと!
彦一 ……全体どうすれば、いいといふんです?
白木 ……早いとこ立退いてくれさえすりや、いいんだ。
お辻 (彦六に)いい加減にして下さいよ。あなたあ心がらだから本望か知れませんが、私や……
彦六 おい、お辻、私をうまく立退かせたら、五百円だけ貰へる約束になつてゐるのは誰だつけな? ……大分もうろくはしたが、これでまだ眼は見えるよ。
お辻 ……(青くなつてゐるが、やがて猛然と逆襲して来る)ぢあそれが悪かつたの? それと言ふのも、あなたが自分一人の我を張つて、私やミルちやんの事を……
ミル 私の事は言はないで頂戴。
お辻 第一、私が金を貰つたつて、そ
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