いだけの物が此の内に入つて来るんなら、何もツノメ立つ事は無いぢやないか。
彦六 ハハ、鉄造さんとの約束を忘れちや、苦情が出るぜ。今度此処に出来る食堂で鉄さんは酒場の方をやるし、お前は女給の監督になるやうに、チヤンと話が出来てゐるさうぢやないか。
鉄造 そ、そんな、旦那、そりやあなた――
彦一 階下の女給さんも監督にして貰ふ約束だつて言つてたぜ。監督が一度に二人出来るわけか。
白木 さう言ふ事よりも、ねえ正宗さん、あんたは、松田の方では金がうなつてゐるとでも思つてるから、癇も立つんだ。ところがどうして/\遊んでゐる金なんて今時あるわけのものぢや無い。地代の値上げもあり、あれやこれやで積つてみると、みすみす一日にど偉い金が消えて行くんだ。松田のオヤヂさん、日に二度も三度も私の方にやつて来ては、泣いてゐる始末ですぜ。
彦六 そつちは泣きや済むかも知れないが、此方は直ぐに命にかかはる事だからね。
白木 ですからさ、チヤンとそれだけの事はしてあるんだ。ねえ!
彦六 私やそれでもいい。だが、叩き出された十一軒の家がそれでは済むまいよ。よしんば、みんながそれで泣寝入りになるとしても、正宗彦六が通さな
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