んてえ、卑怯な真似はあんたも考へちやゐまいね。
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言はれて彦六はせせら笑ひをしながらチヨツト考へてゐたが、直ぐにそのままミルの身体を抱くやうにして、裂けたまま下つてゐるカーテンの奥へ押し込んでしまひ、自分は寝床にゴロリと横になつて毛布を被る。白木は鉄造にめくばせし、キユーを二本取り、鉄造に一本持たせる。階段に足音。お辻、球のサツクを持つて来て、球台の上に球をばらまく。白木がいきなり球を突く。押殺した短い間。
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お辻 ……三つ。……五つ。
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ドアを押して客二がスイと入つて来る。
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お辻 ……おや、いらつしやい……七つ。
客二 (室内を見廻す)なんだい、今のは?
お辻 今のつて? 九つ。九つ当り。
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ゲーム盤をカチヤリと鳴らす。白木、横目で客二を見る。
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客二 いや、今の音は?
白木 ……あゝ(階下で見た客であることに気が附いて)私がさつきキユーを倒したから、大方それだらう。
客二 (鉄造を見る)ひどく顫へますね?
お辻 お突きんなりますか?
[#ここか
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