つ! こら!」、お辻の声「ミル! 白木さん! どつちも危いぢやないか!」と言ふのだけがハツキリ聞える。続いて、バシン! といふ様な鋭い響。ギヨツとして天井を見上げるアサ。客二もギクリとして天井を睨んだまま。
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[#地付き]――幕――
[#3字下げ]第三幕(第一幕に同じ)ビリヤード室[#「第三幕(第一幕に同じ)ビリヤード室」は中見出し]
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一騒動あつた直後らしく、殺気立つた顔で総立ちになつて睨み合つてゐる五人――彦六とミルは畳敷の上に。白木と鉄造とお辻は床の方に。ミルは今迄振り廻してゐたらしい刀を抜身のまま右手に振りかぶつて、肩で息をしながら、床の三人の方を睨んでゐる。その左手は彦六に掴まれてゐる。白木は球台を楯に取つて、右手に黒い物を握りしめてゐる。鉄造は長椅子の所でちぢみ上つてゐる。
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――間――
お辻 ……人が来ると、うるさい!
ミル 畜生!(豹の子の様な唸声を出す)
白木 あゝ誰かあがつて来たぞ!(階段の方と室内をパツパツと見て、掌中の物を球台の下に差し込む)正宗さん、頼む! サツを割込まさうな
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