る。奥の間からアサが取り乱した姿でふてくされてユツクリ出る。
[#ここで字下げ終わり]
客二 ……おい、もう一つ。
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アサ酒を注いでやる。
 ――間――
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客二 ……どうしたんだい? (アサが足を拡げて立つたままシク/\泣き出す)どうしたんだ?
アサ 畜生! 色魔! 私を、私の事をほつたらかして……お辻もお辻の奴だ! 球突きのおやぢからチツトもかまつて貰へねえもんだで、かつえやがつて! (泣く。泣きながらしかし、店の内が変な事に気が附いて涙のこぼれてゐる顔をキヨロつかせる)……ウエーン、逃げやがつた/\、畜生、飲み逃げだあ。(外にとび出すが、やがて、あきらめて戻つてくる)
客二 (こみ上げて来る笑ひを制しながら)喧嘩なんかしてゐるからだよ……ときに二階の球突きはどうしたんだい? (相手が返事をしないので)立退きを食つてるのか?
アサ ……(うなづいて)二階の旦那あ可哀想に骨までしやぶられてしまうんだ。一番恐ろしいのは白木ですよ、いつもピストル持つてるつて云ふからね。
客二 ……今行つた?
アサ えゝ、(客二は黙つて飲みはじめる)事件屋なんで
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