困つた事をして呉れるねえ。君達が頼まれもしないおチヨツカイを出したばかりに、彦六め、又ぞろ尻を据へて捩《ね》ぢ〈れ〉て来出したら、あの約束も切[#「切」に「ママ」の注記]角だが取消しだよ。
お辻 (あわてて)だつて鉄造さんが、あなたの話だつて、さう言つて――
鉄造 おい/\、邪慳な事は言ひつこなしにしようぜ、もとはと言へばお前が――
白木 まあ/\いいからとにかく行かう。居るんだらう?
お辻 ゐますよ。どこまでネバる気だか、さすがの私も驚いちまつた。あんまりクサクサするんで、ブランデーでも貰ほうと思つてね、鉄造さん、一本頂戴。
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鉄造スタンドの棚から酒ビンを取つて来る。お辻、客二の後姿を認め、ビンを受取りながら、鉄造に、不用心を眼顔で知らせる。その間に白木は外に出て、往来の奥の方へ手で合図をすると、コールテン服の男がスーツと出て来てペコ/\する。白木低声に、二階を指差して何か命令している。
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白木 ……いいな?
鉄造 おいアサ! お店を頼んだぜ。
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お辻は外に出て階段の方へ、白木も階段の方へ、コールテン服は往来へ消え
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