鉄造 ……へえ。
白木 へえじや無いよ君! たつた今も電話で知らせがあつたんで、びつくりしたんだが、一了見で変なおチヨツカイを出して貰つちや困る。人夫はこつちの命令で踏込むことになつて居るんだぜ。それを、君達が動かすと言ふ法は無いよ! 藪蛇になつたらどうするんだ?
鉄造 どうも済みません。いえ、此方で放り出してしまへばあなたの方の手間が省けると思つたもんですからねえ。それに先程はお辻さんが降りて来て、今奴が居ないからと言ふんで、そいで、つい!
白木 その抜けがけの巧名がいけないんだ。実は今夜はいよ/\何んとか解決しないと私も間に立つてゐて、松山さんの方に合はす顔が無いんで、最後の掛け合いに来る気でゐた。それに応じなければいよいよの手段に訴へるつもりで手続きは取つて来てある。そいで、出かけようとしてゐる所へあの電話だ。
鉄造 すみません。
白木 とにかく上へ行かう、今夜はもう否やは言はせない。
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二人出て行きかける。丁度そこへ、じだらくな恰好で階段を降りて来たお辻が、髪の地を指で掻き〈掻き〉ドアを押す。
[#ここで字下げ終わり]
お辻 あゝ白木さん。
白木 やあ、
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