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アサ お辻の奴とグルになつて、あんたらが何をたくらんでゐるか位、おらちやんと知つてゐるんだよ! あんたあバーの方の株と手数料が欲しいんだろよ。お辻はお辻で、うまく二階の旦那を立退かせりや、白木から五百円出る約束になつてんだ。その位のこと知らなくつてさ。なんてまあ、腹ん中の小ぎたねえ!
鉄造 困るよ、おい! 話をすれば解るから、ま、此方へ来い! 話をすれば……(客達をはゞかつて、アサの背をかかえて、スタンドの傍から奥へ連れて行く)
客一 (あつけに取られてゐたが、我れに返つて)ヘヘヘヘ。話したつて解るもんかよ。話したつて解るもんか、馬鹿め! ねえ君! さうだらう? 俺は金はないさ。いや、もつとるかも知れんぞ。(ポケツトを探り、バツトの箱をとり出す)こりやなんだ? バツトの空箱か……ゴールデンバツト/\/\/\(とでたらめのバツト節を歌ふ。その歌に混つて、奥から喧嘩の物音とアサのわめき声がして来る。客一それに気附き歌を止める)ほう、やつとる……(キヨロ/\四辺を見廻してゐたが、やがて飲み残りのウヰスキーをカプツと音を立てて飲みほし、ゴールデンバツト/\と云ひながら裏に逃げ出す)
[#こ
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