古がフイだ。其処まで一緒に行つたげる。
修 いいよ、いいんだよ。
ミル だつて、あんた怖いんだろ? 怖がつてる癖に。
彦六 ハハ。送つて行つてあげるさ。修さん、ひとつ。(杯を差す)
修 えゝ……(困つて人々の顔を見まはす)
ミル よしなさいよ、飲めやしない。
彦六 まあいいよ、一つだけ、私が差すんだよ。ねえ、いいな?
修 はあ……(中腰になつて杯を取る)
彦六 (注ぐ)それぢや、こぼれる、ハハ……
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修の杯が顫へてゐる。
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修 (飲んで)ありがたう……した。
ミル さ行かう。
鉄造 しかし戻りはミルさん一人だから、物騒だよ。私も附いてつてあげよう。
ミル いいわよ、一人で沢山。
鉄造 まあまあさう言はずにさ、とにかく一緒に行くよ。何か間違ひでもあると困るからな。
お辻 あんた御親切だね。……フン。
彦六 ぢあ附いて行つて貰ふさ。(ミル、修、鉄造出て行く。彦六がシユーマイをつゝきお辻を見てゐる)
彦六 ……ひとつ、行かう。(杯を差す)
お辻 私は、どうも鉄造が、怪しいと思つてゐるんですよ。(杯を取る)
彦六 なんだ。
お辻 いえ、今の人足共が
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