ようと言ふんだい? いづれ、白木さんの方のなのだらうが――
彦六 ふん……
お辻 (キヨトキヨト彼方此方を見てゐたが、急に大きな声で)何だい、人の家に踏み込んで来やがつて! おい! サツサと出て行つて貰はうぢやないか! ばかにしてやがる! (その見幕はたゞ事でない。五人の闖入者はびつくり呆れた顔、口を開けてお辻を見てゐる。少しも解せない様子)放り出すなら放り出して見ろつてんだ! チヤントかうして主人が居るんだよ! ふざけやがつて!
[#ここから2字下げ]
五人はゾロゾロ階段の方へ去る。終始無言だが、出がけに中の一人が「なあんでえ、話しが違うぢやねえか」と言ふ声がきこえる。
[#ここで字下げ終わり]
ミル 畜生め。(やがてお辻の方を向いて)お辻さん、先刻あわてて何処へ行つたの?
お辻 なにさ、旦那が一人でソバを買ひに行つたてえから、心配になつてね、ちよつとそこまで……なんだい。
鉄造 だが事態がこんなになつて来てゐるんだ。此方でも考へなくちや。ねえ正宗さん。
彦六 動けないんで弱つた。出て行くと言つたつて行く先もありませんしね。
修 ……僕、これで失敬します。
ミル さうね、おかげでお稽
前へ 次へ
全64ページ中28ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング