まになつてゐたドアから、ハンテン着や、ボロボロのコールテン服や、少しはましな洋服を着たりした、ルンペンとも暴力団とも附かない五人の男達がザザツと入つて来る。修とミルが抱き合つて立つた姿に足を停めるが、忽ち畳敷の方へあがり、押入を開けたり、乏しい家具に手を掛ける。ミルと修は立ちすくんでゐたが、やがてミルが五人の方へ行く。
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ミル なにをするんだ!
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五人は歯牙にかけず、一人はニヤリとしてカーテンをベリベリと引きちぎる。ミル飛びあがつて行き人夫につかみかゝる。そこへ彦六が裏梯子の方から押入の横へ現はれる。右手に一合瓶、左手にシユーマイの皿を持ち、立停つて皆をウツソリと見廻してゐたが、やがてしづかに寝床へ行き坐る。人々の眼が、彼の上に集る。……やがて彦六は手を出し、懐中から取出したチヨコに酒を注いで飲み、シユーマイを、ボソボソ食ひはじめる。一言も口を開かない。周囲は石の様になつてゐる。……鉄造の顔がドアから覗く。続いてお辻。
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鉄造 あゝ、いけねえ! 居るぢやねえか。(恐ろしくヘドモドして)全体これは――。お前たちあどうし
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