。
修 今どこに居るんだ?
ミル わかるもんか……
修 ……そりやさうと、あのお辻さん少し変だと僕は思ふがなあ。僕さつきねえ――。
ミル え? 変?……(少しギヨツとして、相手を見詰める)
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そこへドアからお辻が、だるさうに歩み入つて来る。
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お辻 ……いよう、御両人!
ミル 帰つたの? 白木の奴!
お辻 白木ぢや無いのよ、此の屋台を取壊しに来た仕事師だつてさ……あゝあ。……お父さんは? 便所《はばかり》?
ミル うゝん、ソバを買つてくるつて出てつた。
お辻 ふうん、外へ? さう……
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四辺をキヨロキヨロ見廻してゐたが、なにか一人でうなづき乍らドアの方へ走り出し階段へ消える。
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ミル どうしたんだろ? おかしな奴。
修 ……僕はね、もつと勉強するよ。秋迄にはキツとソロを唄へるやうになるんだ。そしたら給金だつて八十円ぐらゐにはなる。それだけ有りや倹約すれば二人でやつて行けると思ふんだ。ねえミル! ミル!(抱く)
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ミルは鼻を鳴らすが、しかし拒みはしない。間……不意に、開いたま
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