て)……請負師のひとが、旦那何処へ行つたと、やかましく云つてゐますよ。
鉄造 あー――弱つた。ね、お辻さん!……(アサに)そいで、店は?
アサ さつきから二人のお客さんは、まだ居ります。ここでドシ/\踊るもんだから、天井からホコリが落ちるつて、酔つた方の人が怒つてゐたわよ……とにかく早く来て下さいな。(階段の方へ消える)
鉄造 (お辻に)お辻さん、ちよつと、顔を……
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お辻、スタスタ降りて行く。それを追つて鉄造も急いで出て行く。落着かないで窓を見たり彦六を見たりしてゐる修。彦六は階下から響いて来る音楽に聴き入つてでも居るやうに、寝床の上で黙つてゐる――。
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修 ……あの、僕――。
彦六 ……修さん、あんた……お千代の事、ほんとに好いてくれてゐるんかね?
修 (ヘドモドどもつてゐたが)な、なんです、僕、もう少し唄へるやうになつて、収入がもう少し、多くなつたら、けつ、結婚を許して戴きたいと――。
彦六 ……私が云ふとなんだが、あの子は竹を割つた様な気性の娘です。
修 そ、そうです! (アコーデオンのキイを掻き廻す)
彦六 アハハ……。(はじめて
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