見るが、別にドギマギもしないで修の前から歩き出す。
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お辻 ……あんた、まだ起きてゐたの?
声 うむ。……うん。
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お辻、畳敷の方にあがつて行き、カーテンを引開ける。寝床の上に横になつた主人の正宗彦六が、女を見上げてニコニコ笑つてゐる。五十六七の男、枕元に手廻りの道具等。
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お辻 眼が覚めたんなら、さう言やあ、いいじやありませんか。
彦六 ハハゝゝゝ。……いや、私に遠慮はいらんよ。ハハ……
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お辻、修へヂロリと眼をやり、テレかくしに頭髪の根を櫛でゴシゴシ掻いてゐる。
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彦六 (修に)やあ、おいで。
修 はあ、今晩は。……いかがですか?
彦六 ありがたう。どうも朝から晩まで、かうしてゐるんだ。あんたも毎晩御苦労様だ。お千代の奴が無理ばかりお願ひして。
修 いえ、ミルさんは熱心だから、此方も張合ひがありますよ、それに僕の稽古にもなりますからね。小屋でやればいいんですけど、ハネると規則で一人残らず追出されちやうんで……。
彦六 いや、営業してゐると言つたつて、一日せい/″\五六
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