修 え? な、なんですか?
お辻 (肉の豊かな腰をユラユラさせる歩きつきで、修の傍へ)……いえさ、私だつて、かうしていれば、まあ、ミルの母分よ、でせう?……。気になるからさ。
修 そりや、なんです。す、好きです、非常に、僕は……
お辻 フフフ、非常に、か。さう? 非常に?
修 よ、弱つたなあ。
お辻 さう、母分は少し可哀想だつたわね。姉分。これでもまだ若いのよ、いくつ位に見えて、私?
修 ……(困つて壁の方へペツタリとくつついて)僕には女の人の歳はどうも……
お辻 (身体を修にこすりつける)言つたわね、えゝ、どうせ私はお婆さんですよツ。……ミルは、やつと十九、手も足もまだコリコリ固くて……フン。まだ綺麗なんでせう、あんた達?
修 え?
お辻 綺麗な附合いでせうつて、言つてるのよ。
修 そ、そんな、勿論です。僕、その内チヤンと此の方の小父さんにお願ひして、さう思つて――
お辻 あゝ酔つた。(片手を上げ、二の腕の辺まで覗かせて髪を掻く)おゝかゆい、私はね、修さん。
[#ここから2字下げ]
修は殆んど怯えてしまつてゐる。カーテンの蔭でクスクス笑ひ出す声、お辻稍々ギヨツとして、カーテンの方を
前へ
次へ
全64ページ中16ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング