、ミルの方を見る。ミルは修を睨んで立つ、――やにはにキユー台からキユーを掴み取り、振りかぶつて、修の方へ迫つて行く。びつくりしてダンサー二人がそれを押し止める。
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ダンサー一 何をするんだよ、ミルちやん。
ダンサー二 ばかなこと、およしつたら。
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ダンサー二人が、ミルの手からキユーをもぎ取る。ミルはキラキラ光る眼で修を睨む。
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修 ……こらへて呉れよ! (奥の下方、窓の外を指差して)前の往来を先刻から、変なのがウロウロしてるもんだから、つい気になつちやつて――
お辻 へえ、なんなの? (立つてスリツパを穿き、窓の方へ行く)
ダンサー二 (キユーをキユー台に戻しながら)向うの角にも二人立つてゐる。あゝ此方を見てるね。
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ダンサー一もミルも窓へ行く。
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修 よく見えないけれど、十人以上はたしかにゐるよ。
お辻 なに、その辺のルンペンさ。残飯貰ひに夜歩きをしてゐるんだ。
修 だつて、それなら、此の家のまはりだけをウロウロする筈はありませんよ。
ダンサー一 気味が悪いわ、私、早く
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