手の礼をして)小母さん、暫くでした。(あがる)
小母 (湯殿の方へ向つて)五郎はん、兵隊さん見えはりましたえ!
美緒 ……(今迄の変な顔付きを一遍に笑ひにほころばして、寝台の上から目礼する)ようこそ、赤井さん……。
赤井 いかゞです?……
五郎 (湯殿の戸をガタピシ開けて、走るやうにドタバタ飛び出して来る)来たか! (廊下に出て来た赤井とぶつつかりさうになる。現在の彼にとつては殆んど唯一の気の許せる親友が久しぶりに来たので、うれしさの余り少しあがつてゐる)……よう!
赤井 ……(出合ひがしらに、両足をピシツと揃へて習慣になつてしまつてゐる挙手の礼が出る)来たよ。
五郎 ……(自分も思はず釣り込まれて、絵筆を握つたままの右手を額の所へ持つて行くが、それに気付いて)なあんだ! (二人声を揃へて笑ひ出す)
小母 さあさ、服をお脱ぎやす。暑うおしたろ。(これも笑ひながら、飲物の支度に台所へ)
五郎 アツハハハ。(筆具を湯殿の方へポイと投げ出す)よく来てくれた。三ヶ月ぶりだ。
赤井 そんなになつたかな。なんしろ忙しくつて。
五郎 さうだらうな。飯はまだだろ?
赤井 いや食つて来た。実はもつと早く
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