どすえなあ。
美緒 ……(ニツコリして手真似で、横になつて眠つて頂戴と言ふ)
小母 へい、へい。奥さんが良うなつて呉れはつたで、今頃になつて睡気が出て来ました。でも、五郎はんに較べたら、あてなどが睡いなど言ふたら罰が当りま。……でも、なんどすな、いゝ具合に比企先生が東京からお見えになつてゐやして、ホンマにようおしたなあ。これと言ふのも奥さんの運気が強い証拠どすえ。
美緒 ……(何度もコツクリをして見せる)
小母 此処のお医者さまだけでは心細うてなあ。あの方はホンマに黙あつてばかり居やはつて、たより無うて。……さあさ、少しお休みやす。
美緒 (ニコニコ笑つてゐる)
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 小母さんは洗面器を持つて庭に降り、樹の下に水を撒く。……間。
 そこへ医者を送り出して外へ行つてゐた五郎が玄関から黙つてあがつて来る。注射液のアンプルを一本手に持つてゐる。唯さへ憔悴した顔付きが、この数日間の不眠不休の看護のため怖い位にゲツソリと青ざめてゐる。美緒よりも顔色が悪いのである。しかしこんな事には馴れてゐるのと、気が張つてゐるので、前場の浜に於ける彼よりも自分で自分を支配してゐる平静さを保つ
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