こん所は――。
五郎 え?……(ギクリとする。自分が今迄思つても見なかつた事を言はれて不意に、相手の考へが掴めたやうだ。青くなつてゐる)……それ、なんの事でせう?
母親 いえね、あんたにも散々苦労をしていたゞいたんですけど、美緒の病気で私の方でもこれで随分の物入りを続けて来てゐるんですから。
五郎 えゝ、それは、ありがたいと思つてゐます。僕に金が無いもんですから色々御心配をかけて――。
母親 ですからさ、財産を利男に書換へる際には、どうせたんとの事は出来ないんですけど、あなたの方へもいくらか廻さなければならないと私は思つて――。
五郎 いや、僕あ、そんな物要りません。
母親 いえ、それはね、とにかく今迄名儀だけでも美緒の物だつたんですから、あなたが要らないと言つても、どうせ美緒にやらなくちやなりませんから。
五郎 いえ、美緒も僕も、要らないんです!
恵子 だつて五郎さん、それは当然の事ですよ。家の財産ですもの、長男だけがソツクリ相続してしまふと言ふ手は無いわ。娘だつて、それぞれの分け前を貰ふのが当然ぢやなくつて? 姉さんだつて、そいから私も実はいくらか貰はうと思つてゐるのよ。貰つて邪魔
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