でゐるんだ。そいぢやあんまりケツの穴が小さくは無いかなあ。毛利さんの方ぢや、いつも此方の事をシンから心配してゐるんだよ。
五郎 ……(すなほに、毛利に対して反感を抱いた事を自ら恥ぢて)うん、俺あケツの穴が小さい。近頃益々偏狭になつて来たやうだ。俺あなさけ無いと思ふ事があるよ。……でも仕方が無いんだ。……毛利にはよろしく言つてくれ。好文堂の絵本の仕事だつて毛利が見付けて呉れたんだから、俺が毛利の事を少しでも悪く思ふのは間違つてゐる……俺あ、ホントにありがたいと思つてゐるんだ。それだけで沢山だから、どうかソツとしといてくれと言つてくれ。
尾崎 ……さうかなあ。しかし……結局君がそんな風になるのは画が本当に描けないからだよ。だから、水谷先生の所へ行つて何か仕事を貰つて、金が出来りや道具も買へるし、暇も出来るし、自然――。
五郎 いや、金の問題ぢや無いんだよ。……画が詰らなくなつちやつたんだ。
尾崎 ば、ばかな! 君が、そんな――。
五郎 信じられないだらう。以前には画の虫と言はれた俺だもんなあ。でも事実、さうなんだ。……美緒がね、……実は美緒の事ホンの此間まで、俺は彼奴の病気は治るもんだ、ど
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