いつは、どうも、しくじつたかな? (コツプのビールをカプツと飲む)
五郎 ……(考へ込んでゐる)
尾崎 若干、最初にこの、構図を取りそくなつたらしいや。
五郎 ……(気が付いて、スケツチ板の方を見る)なに、さうでも無いだらう。
尾崎 君がビールなんか仕入れて来て呉れたりするのが良くない。飲んでたら、変な絵になつちまつた。ハツハハ。(ビールの所に戻つて来て坐る)……少しやつたらどう。
五郎 いや、俺あ、いゝんだ。
尾崎 だつていくらも飲んでないぢやないか。たまにや君も少しやつて、ポーツとしないと身体が続かない。
五郎 いや、今あまり飲みたくないんだ。こつちの方がありがたい。(言ひながらイナリずしをつまんでムシヤムシヤ食ふ)考へて見たら昼飯が未だだ。
尾崎 大変だなあ君も。……そいで奥さん近頃どんな具合なんだよ?
五郎 う?……うん。……
尾崎 そんなにいけないのかね?……いや、毛利さんがこないだ言つてゐた。久我んとこの病人の具合が良いか悪いかを知るにや奥さんに逢つて見る必要は無い。久我の眼付きを見りや一遍にわかるつてね。……痩せたよ君は。(ビールを飲む)
五郎 ……あのね尾崎君、……何度
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