になつてゐる。誰も彼もみんな病人だ。…わかるかい? ……そして、この病気を治してくれるのは、昔の、俺達の先祖が生きてゐた通りに生きて見る以外に無いよ。自分の肉体でもつて動物のやうに生きる以外に無い。動物と言つて悪けりや、一人々々が神になるんだ。……今、戦争に行つてゐる兵隊達が、それだよ。動物でもあれば神々でもある。日本の神々が戦つてゐるんだ。戦争をすると言ふ事は、最も強烈に生きるといふ事だよ。さうぢやないか。理窟もヘチマも、宗教もイデオロギーも、すべてを絶した所で、火の様になつて生きてゐる! それが戦争だ。いゝか? ……俺達は万葉人達の子孫だ。入りて吾が寝む此の戸開かせだ。早く開けろ。それでいゝんだ。お前が、赤井と伊佐子さんを一緒に寝させたがつた。それでいゝんだ。それでイライラして熱を出した。それもいゝ。俺あうれしいよ、その調子なんだ。……俺達あ、美しい、楽しい、かけがへのない肉体を持つてゐるんだ。ゆづるな、石にかじり付いても、赤つ耻を掻いても、どんなに苦しくつても、かまふ事あ無い。真暗な、なんにも無い世界に自分の身体をゆづつてたまるか。[#「たまるか。」は底本では「たまるか?」]
美
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