五郎 ……(美緒をさぐる様にジツと見守つてゐたが、やがてカンバスを表に向けて襖に立てかける)……ぢや見ろ。
美緒 ……(その画の方へ首をグツと上げるやうにする)
五郎 そんな事しちやいかん。……(美緒の首の所に片手を当てがつて支へてやる)
美緒 ……(荒い調子で描かれた風景にピタリと眼を吸ひ附けられ黙つて見詰める)
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間。……五郎も自分の画を見てゐる。
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美緒 ……あゝ、綺麗だ。(自分を忘れたやうな声を出す)
五郎 ……もういゝだらう。疲れる。
美緒 ……いや、もつと。……あゝ! (まだ見詰めてゐる)
五郎 もういゝよ。疲れるから。(美緒の頭をそつと枕の上に置いてやつて)……なんだ、泣くやつがあるか。
美緒 ……久し振りよ。……あんたの画を見るの……。
五郎 ハハ、そらそら――(と涙を拭いてやりながら)……なんでもいゝから、もう口を利くのは、よしなよ。
美緒 ……ありがたう……。
五郎 よせと言つたらよせ。……(吸入器の口を直してやる)これから、いくらでも描いてやる。……薬は飲んだのか? (美緒うなづく)……少し顔が赤いね?……気分は悪く
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